もうすぐ彼の誕生日
出来ればプレゼントを贈りたい

でも、彼の欲しい物って、何?


I miss you.

番外編

-Present for You-


彼が私の付き人になって早1年
私が苦しい時、悲しい時、辛い時、常に一緒にいて支えてくれた彼

そんな彼の誕生日が来月に迫ってることを、私は知った。
コレを機会に、日ごろの感謝を込めて何かプレゼントを贈りたいと思ったのだけれど…
情けないことに、一体何を贈ってみればいいのか分からない…

そうだ、こういう時は私が誕生日の時貰う物から導いてみましょう。
まずはそうね…、お花は…、何だか他人行儀よね…
お人形なんか…、考えるまでも無いわよね…
…宝石? うーん、それこそ何かが違う気がする。

…そもそも女である私を基準に物を考えようとしたのが間違いよね。
それに私自身、くれた方には悪いけど、こういった物を貰っても持て余してるのが現状だし…

せっかくプレゼントを贈るのなら、何か彼の役に立つような物をあげたい。
けど、男の人に贈っても違和感がなくて、それでいて役に立つ物って何?

…思い浮かばない。

うーん…、そうね、やっぱりこういう時は人に聞いてみるべきよね。

でも誰に聞いてみるべきなのかしら…

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「それで呼ばれたのが…、私ですかい?」

「えぇ…、こんな夜更けにごめんなさい
 けれど、貴方ならジタンのことを一番理解してると思って…」

ガーネットの目の前に座ってる大柄な男、彼の名はバクー
タンタラス団のリーダーであり、ジタンの育ての親でもある。

リンドブルム王、シドの知り合いであり、かつ女王も個人的に知り合いではあるものの
仮にも盗賊団のリーダーである以上、そんな人物と一国の女王が話すのは体裁がよろしくないと言うことで
この面会もお忍びの物だったりする。

「いやいや、呼び出されたこと自体は構わないんでさぁ
 ただ…、ジタンの奴も女王様にこうも思われて幸せな奴だなぁと思いましてね。」

「そんな…」

少し顔が赤くなるガーネット、バクーは続ける。

「しかしあいつへのプレゼントねぇ…」

腕を組み、暫し考えるバクー
そしてそんな彼の沙汰を待つガーネット

「持て余すことなく、必要としてる物…
 うーむむ……、むむ!」

何かに気づいたバクー

「分かりましたぜ女王様、それはズバリ…」

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「うおー…、終わったぁ〜…」

そう言って部屋のベッドで伸びをする俺

女王の付き人になって早1年
思った以上の激務に、初めの頃は何度も力尽きそうになったものの
王女であるガーネットは自分よりも遥かに重い責任やらに晒されてることを思えば、と
必死に耐え抜き、最近はようやくこの仕事にも慣れ、やりがいを感じるまでになってきた。

さぁ、今日も明日の仕事に備え、さっさと寝るか
いや、その前にベアトリクスから出された課題を終わらせなくては…
ひょっとしたら今日も睡眠時間は3時間くらいか?
まるでナポレオンみたいでカッコいいな!
本当アレクサンドリア城での生活は大変だぜ、フゥハハハーハァー

はぁ…、思わずため息が出た。

そこでふと思い出す、そういや部屋に入る時扉に何か紙が挟んであったんだよな
アレはどこに…、とポケットをまさぐって見たら、あったあった
えーっと、なになに? 展望台で待ってます、ガーネットより…、って、ガーネット?

『深夜に密会』、そんなキーワードから
思わずやましい想像をした自分の頭を殴りつける俺

さて、彼女の用事は何だろう? まさか付き人の仕事を解雇通知とか…
まさかな、ハハハッ、少し血の気が引いちゃったじゃないか、ハハハッ
そんなこと考えてる暇があったらさっさと向かおう、うん。

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…展望台と言うのは、まぁ読んで字の如くな場所
あそこから見れるアレクサンドリアの街並みはかなり壮観だ。
俺も以前、この城で仕事するようになったばかりの頃
慣れないことばかりで精神的に参った頃は、よくここに気分転換の為に来てたっけなぁ…

さてと、そろそろ展望台だけど…、おっ、いたいた。

ガーネットに「おーい」と手を振る俺
彼女も俺に気づいたのか、はにかんだ笑顔で手を振る。

「待ったかい?」

「いいえ、今来たところよ」

そんな会話を交わす俺たち
何だかガーネットはそわそわとしてる、おまけに心なしか緊張してるような…
そしてその後ろに回してる手は一体何なんだろうか。

「今日はどうしたんだ?」

「え? えぇ、今日って確か貴方の誕生日でしょう?」

「…誕生日? あー…、そっか、今日だっけ、すっかり忘れてたよ」

「それで…、コレを渡そうと思って…」

そう言って背中に回していた手を前に出す
その手に持っていたのは…

「コレは…、ダガー?」

渡されたのは一振りのダガーだった。
皮製の鞘に収められ、その中心をリボンでラッピングされている。

「えぇ、誕生日プレゼントにと思って…」

指を絡め、もじもじとしながらそう言うガーネット
その様子はとっても可愛いんだけど…

…どうしてダガーなんだろうか?
彼女のセンスとは違うような気がするんだが…

「…もしかして、気に入らなかった?」

心配そうな顔をするガーネット、慌てる俺
まさか、滅相も無い。

「え? いや、そんなことは無いよ、すごい嬉しい。」

プレゼントをくれたのは本当に嬉しい。
そして何よりも彼女が俺の誕生日を覚えていてくれたと言う事実が凄く嬉しい。

「そう…、良かった。」

ホッとした様子の彼女を見てホッとする俺
せっかくの彼女の好意を無下にするような真似だけは決してしたくない。

…しかし何でダガーなんだろうなぁ。

「ふふ、そのプレゼントね、実はある人にアドバイスを貰ったの」

「ある人?」

「そう、ある人、誰だと思う?」

いたずらそうな顔をしてそう言うガーネット

アドバイスを参考にしたのか
だからダガーだったのか…

しかしある人…、ダガーがアドバイスを請うような人と言えば…
まずこんな質問をするってことは俺の知り合いであることは間違いない。
しかしあの騒乱時の仲間でダガーを薦めるようなのはいないだろうし…
更に言えばこの城の人間にもいないだろう、そうすると…

「…タンタラス団の誰か、とか?」

俺がそう言うと、ガーネットは少し驚いた顔をする。

「えぇ、そうよ。」

そうか、タンタラス団のメンバーか
それで更にダガーを薦めそうなのは…

「ブランクとか?」

「いいえ、違うわ」

「じゃあマーカス?」

「違うわ」

「ならシナ?」

「いいえ」

「ゲネロ?」

「いいえ」

「ゼネロ?」

「いいえ」

「べネロ?」

「いいえ」

「それじゃあ…、ルビィ?」

「いいえ」

ふふふといたずらな笑みを湛えるガーネット

おいおい全滅じゃないか…
他にメンバーは…、いや、まさか

「…バクー?」

「…当たり」

バクーだったのか
まぁ、冷静に考えてもみれば、バクー以外じゃガーネットとお目通りすら叶わないよなぁ。
一応バクーはシドのおっさんと知り合いだし、その辺のツテを使って会ったと考えれば違和感は…ないよな?

「バクーさんがね、『以前ジタンがそろそろ新しいダガーが欲しいって言ってた』って教えてくれたの」

なるほど、と納得する俺
…でも待てよ、俺そんなこと言ったっけ?
そもそもここ1年はバクーと会話した記憶が無いんだが…

ハッとする俺、あぁ、そういやまだガーネットと再開する前
黒魔道師の村にいる時、遊びに来たバクーにそんなことを言ったような気が…

えー、かれこそ1年半くらい前の話になるな、ハハッ

「だから城下の鍛冶屋さんに行って、そのダガーを打って貰ったのよ」

「そうだったのか…」

つまりコイツは特注品ってワケか?
…ハハハ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの、ごめん、泣いていい?
嗚呼、ようやく激務に追われる日々が報われた気分だよ…

「なぁ、ガーネット」

「何?」

「プレゼント、本ッ当にありがとうな、俺、大事に使うよ。」

笑顔でそう言う俺、そしてガーネットは少し複雑そうな顔をしつつ

「うーん、大事に使って貰うにこしたことは無いんだけど…」

なんてことを呟いた後、頭を横に振り

「どういたしまして」

と、綺麗な笑みを返してくれた。

きっとこれからも色々と大変なことはあるだろう。
けれど、彼女の笑顔の為なら、きっと俺は何でも出来る。

そう、確信出来るほどに綺麗な笑みを。


Fin...





〜おまけ〜

翌日、俺は早速昨日貰った短刀を腰に携え仕事場に向かうと
職場の人々から誕生日プレゼントを渡された。

どうも皆ガーネットに気を使って当日渡すのを控えてたらしい。

『職場の人間一同から』と言う形で貰ったのは一振りのダガー
どうやらバクーのアドバイスがあろうがなかろうが、俺へのプレゼントはダガーで決まりのようだ。

ちなみに、対アレイ戦でダメにしたのはこっちのダガーで
無意識とは言え、その残骸を放り投げてしまったことを死ぬほど後悔したのは後の話。


・番外編、最近PCの調子が悪いので、フライング投下。
・『ダガー』のところは『短刀』にすべきだったかもしれない。


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