第二幕


「何故お前が生きているんだ、ガーランド・・・」

 ジタンはガーランドに問う

 だが、ガーランドは答えない

 代わりに、無言でその腕を上げ、ジタンに向け、魔法を撃ちこむ


I miss you 2


「・・・・ッ!!!」

 ジタンは私を抱きかかえたまま、後ろに跳ぶ

 瞬間、さっきまで私達のいた場所は、跡形も無く吹き飛ばされる
 
 2発・・・3発と、続け様に撃ちこまれる火球・・・・、フレアを、ジタンは全て避ける
 6発目にして、ようやくその攻撃が止むと、ジタンは小さく呟いた

「・・・だんまり・・・、ってワケか、ガーランド・・・」

 ジタンはゆっくりと、抱きかかえていた私を地面に降ろすと、言う

「ガーネット、俺はここでガーランドと戦ってる
 その間に、スタイナーのおっさん達を呼びに言ってくれないか?」
「そんな・・・ッ」

 ―私だって戦える

 そう言おうとしたけれど、私はそれを口に出すことは出来なかった
 彼の顔には、普段決して見せることの無い、怒りの色がハッキリと出ていたから

 私は、コクンッ、と頷くと、ジタンに背を向け、スタイナー達の元へ、走り出した

―――――――――――――−−

 俺はガーネットが見えなくなったのを横目で確認すると、ガーランドを睨みつける。

「俺がガーネットに意識が向いていた今さっき・・・
 どう考えても攻撃のチャンスだったハズなんだが
 どうして攻撃してこなかったんだ?ガーランド?」

 ガーランドは沈黙の姿勢を崩さない

「まただんまり、か・・
 ガーランド、お前が生きていたことはこの際どうでもいい
 けれど、お前はガーネットを狙って攻撃をしてきた
 その理由についてだけは、力ずくでも答えてもらうぜ!ガーランド!」

 俺は背広の上を脱ぎ捨てると、右腰と、左腰にそれぞれ携えてあった、短刀を抜く

 そして戦いの構えを取ると同時に、地を蹴る
 突然の俺の動きについてこれなかったガーランドは、1テンポ遅れて魔法を発動させる
 だが、俺はそれを軽々と避けると、ガーランドの懐に入り込み、奴の右腕を斬り飛ばす

 ガーランドは即座に左腕を俺に向け、魔法を発動させようとするが
 俺はそれよりも早く、奴の左腕を斬り落とすと、両腕の無くなったガーランドを地面に押し倒し、首に短刀を突きつける!
 
「さぁ、ガーランド!両手無しでは得意の魔法も、もう使えないだろう!
 答えろ!どうしてガーネットに魔法を放った!!」

 だが、それでもガーランドは答えない

「お前、いい加減に・・・」

 そこで、ふと気がついた、奴の、ガーランドの目に、生気が全く感じられないことに

「なんなんだよ・・・、ガーランド、お前・・・、これじゃあまるで・・・」
「まるで・・・、”人形”」

 ハッ、と、俺は声のした方向を見る。

 聴いたことの無い声、誰だ?

「そう、そいつは人形、魂の無い、器だけの存在
 ただただ、僕の言うとおりに動くだけの、人形さ」

 印象的な白髪、華奢な体形、眼鏡をかけ、背中からは俺と同じ尻尾が見える。
 この男は、身振り手振り、どこか演技がかった大げさな話し方を・・・

 ・・・・尻尾?

「こんばんは、そして初めまして、ジタン・トライバル、僕の名はアレイ」

 ・・・・尻尾だって・・?

「僕はテラで科学者をやっててね、君達ジェノムを生み出した者さ」

 テラで科学者?俺達を・・・俺達を、生み出した?

「今回は君を捕獲しに来ただけなんだけど
 なんとこの国の女王様が君と一緒にいるじゃない
 まぁ、やはりこの世界を手中に収めたいと思っている者の一人としては
 その国の女王を殺れる、千載一遇のチャンスなワケでさ、思わず攻撃しちゃったよ、ハハハ」

 俺を捕獲?
 この世界を手中に収める?
 その為にガーネットを攻撃した?
 こいつが、ガーランドを使って、攻撃した?

「でも、本来最も優先する事柄は、彼女の殺害よりも君の捕獲だしなぁ・・・
 なんて、標的も定まらぬまま、適当にガーランドを突入させたらこのザマ、ってワケさ」

 頭の中がグルグルと回っている
 正直意味が分からない、突然何を言い出してるんだコイツは

「まぁ、もっともタダで君も捕まらないだろうし
 初めから一戦交えるつもりだったしね
 これから君のことを、僕も捕獲しようと思うから、よろしくね」

 アレイはそう言うと、手をこちらに向け、「ファイア」と、一言

「捕獲って・・・、なッ!?」

 火球の大きさ自体はガーランドのフレアより小さい
 が、その火球は、フレアより遥かに高速で、遥かに禍々しいオーラを纏っていて・・
 幾多もの戦場を駆け抜けてきた俺の本能が、危険信号を狂ったように発し
 気づいた時には、俺は地を蹴り、後ろに跳んでいた

 ファイアが俺がさっきまで押し倒していたガーランドに着弾すると同時に

 辺り一面が

 光に包まれた。

―――――――――――――――−−

「スタイナー!!」
「女王様!!どうしたんでありますか、そんな大急ぎで・・・」
「ジタンが、ジタンがガーランドと戦ってて・・・!」
「じょ・・女王様、落ち着いて、何言ってるんだかよくわからないのであります」
「とにかく、ジタンが大変なことになってるの、早く行かないと、大変なことに・・・」

 直後、夜だと言うのに、眩い光が城に入り込んだと思ったら
 激しい爆音と共に、爆風が城を襲った



「う・・・うん」

 気がつき、目が覚めると
 目の前には、額から血を流しているスタイナーが、「女王様!大丈夫でありますか!!」と声をかけてきた

「ス・・スタイナー!!額から血が・・・!!」
「これくらい大丈夫でありますよ」

 スタイナーはそう言うけれど、私はすぐに額に手をかざし、ケアルをかける
 見る見るうちに治ってゆく、スタイナーのケガ

 よかった・・・、1年ぶりだけど何とか使えたわ・・・

「おぉ、さすが女王様、あっという間に傷が治ったであります!」

 ケガが治り、喜ぶスタイナー

 ・・・っと、ここでハッと周りを見回してみる

 奇跡的に城自体はなんとも無かったみたいだけれども、どうも爆風で窓が幾つか割れてしまったらしい
 私達は窓の前で話してたら、スタイナーは私を割れたガラスから守るためにあんなケガを・・・

「スタイナー、ありがとう・・・」

 私がお礼を言うと、スタイナーは一瞬キョトンとしたけれど
 すぐに私を庇ったことに言われたお礼だと気づき、慌てて

「い・・・いえ、主君の為を守るのは我々騎士の勤め、気にしないでください」

 と言う、主君・・・か、私としてはまだまだそんな器じゃないと思ってるけど
 そう思ってくれている人がいると、やはり頑張ろうという気になる・・・

 ・・・っと、そんなことを考えている場合じゃなくて・・

「スタイナー!」
「・・・ハッ、ハイ、女王様!」
「城内のケガ人の数、及び被害状況の確認を、早急にお願いします」
「わ・・分かりました!!」

 そういうと、スタイナーは駆け出した

 普段なら、城内は一般の国民の立ち入りは禁止だけれども
 今日は私の誕生祭、一部区画だけとは言え、一般国民に開放されているし
 万が一、万が一国民の身に何かあったりしたら、それこそ大変
 遠かったとは言え、突然の爆発、仮に爆発での被害が無かったとしても
 混乱した国民達が暴徒と化し、第2、第3次被害に繋がるのだけは避けたい
 とにかく、急いで私が指揮を執らないと・・・

 ・・ふと、割れた窓から外を見てみる
 あの爆発は、恐らくジタンのいたところで起きたのだろう
 とにかく、急いで事態を収拾させてから、兵士達を送らないと・・・!
 ジタン、待ってて、すぐ行かせるから・・・!

―――――――ー−−−

「・・・チクショウ・・・、なんてデタラメな威力なんだ・・・」

 爆風で数十メートル以上飛ばされてしまったが
 幸い傷を負うこと無く済んだ。

 ・・・しかし、アレは本当にファイアなのか?

 頭の中でかつてビビが使っていた光景がフラッシュバックする。

 ・・・・少なくとも俺の知ってるファイアは、あそこまで威力は無かったハズ

「あの魔法を避けたんだ、さすが・・・、と言うべきなのかな?」

 ハッ!と俺が顔を上げると、そこにはアレイがいた

「なに?呆けちゃって?
 あー・・・、なるほどね、どうして低級魔法のハズのファイアにアレだけの威力があるか不思議なんでしょう?」

 アレイは嬉しそうな顔をしながら、言う

「黒魔法って言うのはね、術者の魔力に比例して強くなるんだ
 多分君は黒魔道師の人形の魔法しか見てないと思うけど
 あんな人形如きに内臓されている魔力の量なんて微々たるものさ
 テラにいた数多の黒魔道師達の魔力に比べたら、ね。
 ・・・とは言え、低級魔法であれだけの威力を出せるような魔法使いなんて
 テラ、いや、世界広しと言えど、僕以外いないだろうけどね。」

 笑顔でそう言い切るアレイ
 あぁ、なんだろう、コイツの笑い顔には、何かデジャヴを感じる
 それもスッゴイ不快なデジャヴを

「さぁて・・・、それじゃあ、続きをしようか
 大丈夫、殺さないよう、キチンと手加減してあげるからね。
 あっ、ただ五体満足でいられるかは保障出来ないけどね、フフフ・・・」

 そう言うと、俺に向けた手のひらに魔力を集めだすアレイ

 ・・・クソッ、アレだけの威力の魔法をそう何度も出されたら
 例え俺が避け続けることが出来たとしても、間違いなく周りに大きな被害が出る。
 奴にこれ以上魔法を使わせるのは、危険だ

 ・・・本当は使いたくなかったけど、今回ばっかはそうも言ってられない
 ちょっと勿体無いけど、アレを使うとするか・・・

 俺はその場で屈み、クラウチングスタートの構えを取ると、全身の力を全て足に込める
 アレイの手のひらに込められている魔力が、極限まで集まったのと同時に、俺は全力で地を蹴る

  ―アレイの手から高速で放たれるファイア

  ―拳位の大きさしかないそれは

  ― 一度撃ちこまれれば、半径数十m四方を焦土とするだけの威力がある

  ―だが、たとえどんな高威力の魔法であろうとも

  ―この太刀の前には、無力!
 
  ―右腕の短刀に、青白い光が集束してゆく―

 高速で飛来するファイアを、すれ違い様、右腕の短刀で切り払う
 そしてそのままの勢いで、俺はニヤケ面のアレイの右腕を、左腕に持った短刀で斬り飛ばす

 ザッ、と、アレイの数メートル後ろで踏みとどまると
 ワンテンポ遅れ、切断したアレイの右腕が、地面に落ちる

 直後、アレイの肩から勢いよく噴出す血

「・・・え・・・え?」

 あまりに一瞬の出来事に、何が起きたのか分からないのだろうか
 右腕が本来あった場所と、落ちている右腕を、呆然としながら交互に見るアレイ

「・・な・・・え・・?あ・・あ・・うああああああ!!!」

 直後、アレイは地面に跪く、顔には苦痛と、怒りと、疑問の色が浮かんでいる

「『何が起きたのか分からない』って面してるな・・・
 教えてやるよ、アレイ
 俺の持っている短刀は、付属のアビリティがちょっと特殊でな
 能力を発動させれば、あらゆる魔法を一太刀の元に無効化させることが出来る
 けれどその代わり、こんな風に・・・」

 俺は右手に構えていた短刀をアレイに見せる
 短刀はボロボロと音を立てながら、崩れ落ちていく

「過度に使いすぎると、短刀自体が壊れちゃうんだな
 それなりの業物だし、結構気に入ってたってのになぁ・・・」

 やれやれ、と言いながら、俺は刃が無くなり
 柄だけとなった短刀を、横に投げ捨てると、左手に持っていた短刀を右手に持ち替え
 肩の傷口から多量の血を流し、跪いているアレイに、言う

「さぁ、アレイ、その傷じゃあもう戦うことは出来ないだろう
 直に兵士達も来るだろうし、あきらめて・・・」

 ―あきらめて投降しろ

 そう、俺が言おうとした瞬間、アレイが突然叫びだした

「よくも・・・、よくも僕の腕ぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 アレイは左手を俺に向けたと思ったら、次の瞬間には火球が俺のすぐ目前まで迫っていた

 なっ・・・避けられ・・・

―――――――――――−− 

 アレイの左手から発せられたファイアは、ジタンに命中し、大爆発を引き起こした

「は・・はははははは・・・!ザマァ見ろ、ジタン・トライバル!!
 僕をこんな目に合わせた罰だ!!地獄で精々僕に詫び続けるんだな!!はーはっはははは!!」
「誰が地獄に落ちたんだい?」
「はは・・・は?」

 濛々としていた白煙が徐々に晴れると・・・
 そこにいたのは・・・・

「クジャ・・・ッッ!!貴様・・・、一体僕のファイアをどうしたんだ・・・ッ!?」
「君のファイア?あぁ、アレ魔法だったんだ?それなら僕が握りつぶしたけど」

 あっけらかんと言い放つクジャ
 あっけに取られるアレイ

「クジャ・・・」
「あっ、ジタン、大丈夫かい?」
「あぁ、おかげ様で何とか、な」

 クジャの後ろには、アレイが殺したつもりのジタンがいた
 あまりに突然な出来事に、どうリアクションを取っていいかすら分からなくなったアレイ

「ねぇ、ジタン、彼はどうしてあんな間抜け面してこっちを見てるんだい?」
「・・・まぁ、突然やってきた男に、自慢の魔法を握りつぶされた上に
 間違いなく死んでたハズの相手まで生きてたら、あんな風に呆然としたくもなるんじゃないか?」

 そこでふと、ジタンはクジャの顔を見てみる
 よく分からないが自信満々な顔に、不敵な笑み、そしてどこか演技がかった話し方と・・・

  ―あぁ、さっきアレイに感じた不快なデジャヴの元はコイツか・・・

 そう思うと、ジタンはクジャの顔を見て、ため息をつく

「?どうしたんだい、ジタン?僕の顔に何かついてるのかい?」
「いや、なんでもないよ・・・」

 デジャヴの元を突き止めたはいいが、世の中にクジャのような人間がもう一人いたという事実に
 何となく暗い気持ちになるジタンであった

「・・・クソゥ・・・」
「・・ん?何か言ったか?アレイ?」
「あっ、彼の名前アレイって言うんだ、へー」
「クソッ!クソッ!!クソッ!!!クソッ!!!!
 貴様らはどこまで僕らの邪魔をすれば気が済むんだ!!!」

 突然叫びだすアレイ

「なんだい彼?突然発狂したりして・・・」
「お前に対して怒ってるみたいだぞ」
「貴様にもだ!ジタン・トライバル!!消してやる!!!!
 貴様ら二人まとめて、この世から跡形も無く消し去ってやる!!」

 アレイは左手をジタン達に向ける
 すると、アレイの左手に尋常でないまでに高圧の魔力が集まり始める

「うーん、コレはまた強力そうな魔法だね。」
「お前本当にそう思ってるか・・?」
「半分くらいは」
「半分てお前・・・」
「まぁ、とりあえずサッサと片付けようか、彼に聞きたいことがあるしね。」
「聞きたいこと・・・?」
「何をゴチャゴチャと言ってる!お前らに言っておくが、今この僕が放とうとしているのは、炎系最上級魔法フレア!!
 威力はファイアの比じゃない・・・ッ!貴様ら二人とも、跡形もなく・・・」
「また炎系の魔法かよ、いい加減飽きた、お前ら違う魔法使えないのかよ。」
「ふふふ、そこで僕の出番ってワケさ」

 そうクジャは言うと、右腕を優雅に、そして華麗に天にかざす
 と、クジャの右手に、急速に魔力が集い始めると同時に
 ジタン達の遥か上空から、ゴロゴロと音が鳴り始める

 そしてそのわずか数秒後
 右手に魔力が極限まで集まったクジャは腕を振り下ろす!

 天から降り注ぐ一筋の雷光

 その一撃は、発動寸前の魔法、悲鳴、体、etc・・・アレイの全てを飲み込む・・・

「おい、クジャ、コレやりすぎじゃないのか?」
「大丈夫だよ、多分手加減してあるハズだし・・・」

 黒こげのアレイ、見た限りだと、どう考えても生きてるようには見えない

「・・・うぅ・・・」
「なんとか生きてたっぽいね」
「半死半生って感じだな・・・
 ・・・まぁ、いいや、とりあえずコイツを確保して・・・」

 ジタンがそう言いながらアレイの体に近づこうとした・・・その時

 突風にジタンが吹き飛ばされる。

「ジタン!」

 叫ぶクジャ
 何とか受身を取ろうとするジタンだが
 そうすることも出来ず、数メートルほど転がると、何とか体を起こす

「今のは・・一体・・・ッ!?」

 アレイの前には、大刀を背負い、白いロングコートを着て、茶髪で、そしてやはり尻尾のある男が立っていた

「・・・随分派手にやられたものだな、アレイ」
「・・すまない、ロイ、少々甘く見すぎていたよ・・・」

 ロイと呼ばれたその男は、ジタンに視線を向ける
 その目には、明らかな怒りの色が浮かんでいる

「ジタン・トライバル・・・、貴様がアレイをやったのか?」
「そうだ・・・、と言ったら?」

 瞬間、ロイの周囲を風が吹き荒れる

「殺す。」

 思わずゾクッとするような、突き刺さるような殺気がロイから発せられる

「・・・そりゃまた物騒だ・・なッ!?」

 目にも止まらぬ速さでロイから繰り出される、横一線の斬撃を、ジタンは素早くしゃがみ、避ける
 ロイはそこから更に追い討ちをかけるように、振り上げた大刀を振り下ろすが、それもまた横に跳び、避ける

「ジタンッ!?」

 その間わずか数秒
 あまりに速すぎる攻防に、クジャも1テンポ遅れて声を上げる

 横に跳んだ勢いのまま、ロイから数メートルほど離れ、ロイとの間合いを空けると、ジタンは短刀を構え直した
 その直後、ロイは数メートルあったジタンとの間合いを一気に詰め、ジタンに大刀を振り下ろすが
 ジタンはそれを何とか短刀で受け止める

 鍔迫り合いの形となったが
 片手で持つことを前提に作られた為、小さく軽い短刀では
 大きく、重量のある大刀相手では厳しく、徐々に押されていくジタン

「サンダ−!!」

 クジャの右手から発せられた、雷撃を、横っ腹にモロに浴び、弾け跳ぶロイ

「ジタンッ!大丈夫かい!?」
「あぁ、なんとかな・・・、それにしても、あいつ相当強いぞ・・・」

 短刀、それも一本だけ
 更に先の戦いで蓄積された疲労というハンデがありつつも
 肉弾戦でここまで自分を追い詰める相手・・・
 
 久々の強敵の登場に、ジタンの額に、思わず冷や汗が浮かぶ

 ―あの攻撃でくたばってくれればいいんだが・・・

 ジタンがそう思った直後、またもや突風が辺りに吹き荒れる

「・・・その程度の魔法で俺を殺したつもりか?」
「・・・やっぱそう簡単には終わらせてくれないか・・・」

 風を身に纏い、大刀を正眼に構えるロイ

 短刀を逆手に構えるジタン

 お互い睨みあう二人・・・

「うぁ・・・」

 一触即発の空気を破ったのは、アレイのうめき声だった

「ッ!アレイ!!」

 ロイは大刀を背負い直すと、倒れているアレイのところに急ぐ
 ジタンに斬られた腕の傷と、クジャから受けた雷撃
 その両方のダメージにより、アレイの体はもはや限界に達していた

「・・・・ジタン・トライバル、勝負はまた次の機会におあずけだ」

 ロイはそう言うと、アレイの左肩を担ぎ、ジタンに背を向ける

「・・ッ!こら、待て!逃がすか・・・・」

 またもや吹き荒れる風、近づこうにも、ロイに近づくことが出来ない

「クソッ!なんなんだこの風は!!」

 ジタンが必死に風を抜けようとする中
 ロイは空いている左手をかざすと、聞きなれない言葉を発する
 すると、空間に歪みが生じたと思うと、ロイはそこへ入る

 徐々に元に戻っていく歪み

 ロイは、風を抜けようと必死になっているジタンに目を向けると

「ジタン・トライバル、私の友に手を出した罪は何よりも重い
 次に出会った時は、確実に貴様の息の根を止めてやる、楽しみにしていろ」

 そう言った直後、空間の歪みは完全に元に戻り、ロイと、アレイはいなくなった・・・


続く


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