第一幕FF9 二次創作


「なぁ、ガーネット」

「今日は何の日か」

「君は覚えているかい?」


 I miss you. 1


「た・・・大変!!!」

 純白のドレスを身に纏ったその美しい少女
 ・・・アレクサンドリア第17代女王、ガーネット・ティル・アレクサンドリアは、慌てふためいていた
 女王の証たる天竜の爪がどこにもないのだ
 今日はリンドブルム大公、シド・ファブール9世との会談の日
 外交の場において、その国の王は、その証を身に付けるのは当然の慣わしであり
 例えばリンドブルム大公等は、その証として幾つもの勲章を服に付けているし
 それと同じように、アレクサンドリア女王もその証として天竜の爪をキチンと身に付けなくてはならない
 「おじさまなら付けなくても許してくれるかも・・・」と、一瞬そんな考えが頭を過ぎったが
 例えシドに許して貰えたとしても、ベアトリクスが許しはしないだろう
 それに、そんな甘い考えでいては、いつどこの国に舐められるか分かったものではない
 例え国王と親密な関係にあるとは言え、外交に関してはやはりキチンとケジメを付けるべきである

 ・・・・とは言え、ここはリンドブルム行きの飛空挺の王女専用の個室の中
 ここに天竜の爪が無いと言うことは、恐らくアレクサンドリア城の自室に忘れてしまったのだろう
 やはり証は無しで行くしかないのか・・・、ふと、ベアトリクスが怒っている姿を想像する
 彼女は基本的にあまり怒りを表に出すということはしない、ただただ、無表情なのである
 無表情であり、無言、しかし、彼女のその鋭い目は、ギラギラと輝き、正しく「非難の目」を体言しており
 それと同時に、彼女の全身からは、真っ赤な怒りのオーラが発せられる
 その威力たるは、例えベヒーモスであろうとも、まずその眼力に竦みあがり
 全身から発せられる怒りのオーラなど浴びれば、あまりのプレッシャーに、引っくり返って腹を見せ、降伏の意を示す
 ベヒーモスでさえこの体たらくなのだ、並のモンスターならば、オーラを浴びるまでもなく、その眼力だけで殺傷に到るだろう
 伊達に彼女は「泣く子も黙る冷血女」「百人斬りのベアトリクス」等と呼ばれていないのだ

 ・・余談ではあるが、以前、スタイナーがベアトリクスの隊の女性隊員を見て鼻の下を伸ばしていたのを目撃したベアトリクスは
 焼きもちからか、ギラギラとした目で睨み付け、怒りのオーラを3日間延々とスタイナーに浴びせ続けたのだが
 プルート隊のメンバーや、城の人間が次々とプレッシャーから来る胃痛で倒れる中、スタイナーだけはケロッとしていた時には
 「やはりアレだけ神経が図太くなければ、彼女と付き合うのは不可能なのだろうか」と、ガーネットは、深く関心したものであった。

 と、少し話が脱線したが
 ガーネットは、ベアトリクスの、そのギラギラとした非難の目と
 ベヒーモスすら竦みあがらせるオーラを一身に浴びる事態だけは避けたい、避けたかったのだが・・・

「このままじゃ受けるしかないわよね・・・」

 ガックリとうな垂れ、座り込んでいると、目の前に何かがぶら下げられた

「女王様、お探しの物はこれのことですかな?」
「・・・ッ!!天竜の爪!!?」

 バッとそれを引っ手繰ると、後ろを振り向くガーネット、背後にいたのは
 3年目にもなると言うのに、未だに、どこか背広姿に慣れない、最愛の人だった

「ジタンっ!!コレは一体どこで!!?」
「ガーネットが部屋を出た後、忘れ物がないかチェックしたら、机の上に置いてあったよ」
「机の上・・・・」

 「我ながらなんとも間抜けな・・・」、そう思うと
 へなへなと力が抜け、膝が付きそうになるが、即座にジタンが体を支える

「おっと、こんなところで膝付いたら服が汚れちゃうだろ?」
「あ・・・、ありがとうジタン」

 ジタンはガーネットを立たせると、うなだれた時、床に着き、汚れたスカートの汚れを簡単に落とす

「よし、これで汚れは落ちたな・・・」

 そう言った後、部屋から出ようとドアに近づいたたジタンは、ハッと何かに気づき、クルリと回れ右をした

「ガーネット女王様、そろそろ到着のお時間ですので、降りるご用意をお願いいたします」

 ジタンは頭を下げ、そう言った後
 頭を掻き、「いやぁ、危うく言い忘れるところだったよ」と笑いながら言いながら、部屋を出ようとした

「あっ!ジタン!!」
「・・・ん?どうしたんだい?ガーネット?」
「あの・・・天竜の爪、ありがとう」
「はは、いいよいいよ、これが俺の仕事だからな」

 そうジタンは笑いながら言うと、今度こそ部屋を出て行った

 ―私の17歳の誕生日の日・・・
  イーファの樹での一件以降、行方不明だったジタンと再開して、早2年
  彼はアレから私の付き人となり、常に私のすぐ傍にいてくれた
  お姫様として、お母様や家臣一同に守られ、ぬくぬくと暮らしてきた私が
  突然一国の女王として、激務の中に放り出されても挫折しなかったのは
  きっと彼の持ち前の明るさと、優しさが一番大きかったと思う
  私がどんなに辛い時でも、彼の笑顔を見るだけで元気が出た
  私がどんなに弱音を吐いても、女王としての重責に疲れ、八つ当たりをしても
  彼はただただ、それを優しく受け止めてくれた
  慣れない背広を着て、今までの盗賊としての自由気ままな生活を捨て
  私と苦楽を共にする道を選んでくれた彼に、私はただただ感謝するばかり・・・・

――――――――――――――――――

 シド大公との会談の結果は、上々の成果を上げた
 まぁ、今回は外交の話と言うよりも、両国王の親睦がメインだったし
 今回の会談に対して、元々大した心配はしていなかったものの
 順調に事が運ぶと、やはり嬉しい
 2年経つが、ガーネットは未だに外交での駆け引きが苦手で
 外交の仕事の際は、常にどこか陰のある表情だけれども
 今回は心なしか表情が明るく、彼女のメンタルな面から言っても、この件は大成功と言っていいだろう
 ・・・ただ、その後行ったブルメシアの国王は、どうもなにかがおかしい
 顔から生気が感じられないというか・・・・
 いや・・・、おかしいのは国王だけじゃあない、国全体がどうも沈んでいた
 国民一人ひとりの顔に、生気が無いと言うか・・・、どうも無機質なものを感じた
 フライヤでもいれば詳しい話も聞けたんだけど、フラットレイと旅に出て留守にしてると言うし・・・
 うーん、何だか凄く気になってきたな、どうするか、俺が一般人としてブルメシアに入って、内情調査でもしようか・・・

「・・・・何をしているのですか?ジタン・トライバル」
「いやね、ちょっと考え事を・・・って、うわぁあああ!?」

 アレクサンドリア城、ホール階段に座って考え事をしていた俺は
 背後から突然声をかけられ、驚き、階段から落ちてしまった・・・

「いたた・・、なんだ、ベアトリクスか・・・」
「なんだって・・・、あなたは一体誰だと思ったのですか?」
「いや、誰でもないさ、この時間帯はここを誰も通ったりしないからさ
 まさか声をかけられるとは思ってもみなかったから、驚いたよ」

 今は午前2時、草木も眠る丑三つ時ってところか・・・
 ガーネットの付き人の俺は、常に彼女の近くにいなくてはいけないし
 こうやってゆっくりと考え事が出来るのは、彼女が眠った後
 彼女が全ての業務を終えてから眠る、午後11時以降だ
 っで、今回ここ、ホーム階段に座ったのは
 夜食を食べたりなんだりと、自分のことを全て済ませた後の午前1時なので
 1時間丸まるここで考え事をしていることとなる

「・・・っで、ベアトリクス、俺に何か用かい?」
「ええ・・・、明日の誕生祭のことなんですが・・・」
「誕生祭・・・、あぁ、ガーネットのか・・・、それがどうしたんだい?」
「PM9時30分から、PM10時00分までの間を空けることが出来ましたよ
 その時間はガーネット様は一切の業務から解放され、フリーとなります」
「・・・?それがどうかしたのかい?」

 俺がそういうと、ベアトリクスは眉をしかめながら言う

「・・・あなたが作って欲しいというからワザワザ作ったと言うのに
 まさか忘れたわけではありませんよね・・・?」
「俺が?何を・・・、ッ、・・・ごめん、すっかり忘れてた、本当ごめん」
「・・・まさか本当に忘れていたなんて・・・(ボソリ」
「・・・?、何か、言いましたか?」
「い・・・いえ、思い出したのならいいのです
 それより、ジタン、折角作ったフリーの時間なのです、ガーネット様の為にも、有効にお使いなさい」

 ベアトリクスはそう言うと、俺に背を向けた

「ベアトリクス!」
「・・・なんですか?」
「ありがとう」
「3年間、あなたはよくやってくれました、これくらいお安い御用ですよ
 ・・・それより、ジタン、折角作った時間です、くれぐれも有効に・・・」
「あぁ、わかってるよ、ベアトリクス」
「・・ならいいのです、それでは、ジタン、私は一足先に眠ります、お休みなさい」

 ベアトリクスはそう言うと、フッ、と笑顔を見せ、自分の部屋へと歩いていった

「・・・さてと、俺もそろそろ寝るか・・・、っと、その前に、明日のための用意をしておかなくちゃあな・・」

――――――――――――――――――――――――

 ―今日は私の20歳の誕生日
  そして、私とあなたが、初めて出会った日
  あなたは、それを覚えているかしら・・・?

 誕生日記念公演
 毎年の恒例行事たるこのイベントだけれども
 去年は「君の小鳥になりたい」をやらなかったのを、私がひどく残念がっていたためか
 今年は前例にない、世界三大劇団による、最大規模の「君の小鳥になりたい」を公演してくれたのだけれど
 台本のセリフを、一字一句正確に、一切間違えることなく
 ソラで言い切ることの出来るほど、この作品を熟知している私を唸らせるほどの迫力だった
 まさかあんなスゴイ「君の小鳥になりたい」を見れるなんて、夢にも思わなかったわ・・・

「女王様、よろしいでしょうか・・・?」
「・・・あっ・・、ベアトリクス、どうしたの?」

 私がさっきの劇を思い出し、うーん、と唸っていると、ベアトリクスから声をかけられた

「すみません、女王様、こちらのミスで、予定を少し変更することとなってしまいました」
「ミス?予定変更・・・?」

 ベアトリクスがミス・・・?珍しいわね・・・

「この後、予定の再調整の為、PM9時30分から、PM10時00分までフリータイムとなりました
 申し訳ありませんが、お時間まで待ってて頂けないでしょうか・・・?」
「フリータイム・・、そう、分かったわ、それじゃあ、部屋で待っているから、時間になったら呼びに来てちょうだい」
「真に申し訳ありませんでした、それでは、また10時に・・・」

 私はそのまま部屋へと向かっていく・・・



「うーん、突然フリータイムと言われても、特にやることもないわよね・・・」

 なんて、部屋に帰るなり、ベッドで横になり、グダグダとする私

 ・・・っと、ふとベッドの横の机の上を見てみると、見慣れない手紙が・・・

「手紙・・・?部屋を出る前にこんなのあったかしら?」

 私はそんなことを言いながら、机の上から手紙を取ると、丁寧に封を開け、中身を見てみる

「えーっと・・・、アレクサンドリア城、噴水前で待つ、ジタン・トラ・・・ジタン?」

 ジタンから呼び出すなんて珍しい・・・
 一体何があったのかしら・・・?

 私はベッドから起き上がると、そのまま噴水前まで歩いてゆく

 ・・・・

 噴水前には、ジタンが先に着いていた
 ジタンは私姿に気づくと、笑顔で手を振る

 ・・・彼の笑顔を見ると、何だか楽しい気持ちになる

「いやぁ、あれじゃあ分かり辛いかと思ったけど、来てくれて良かった」
「ジタン、一体どうしたの?あなたから私を呼ぶなんて珍しい・・・」

 私がそう言うと、ジタンは頭を掻きながら、夜空を見上げながら言う

「・・・なぁ、ガーネット、今日は何の日か、君は覚えているかい?」
「今日・・?・・・今日は、確か・・・、私とあなたが・・・、初めて出会った日・・・」
「覚えててくれたのか・・・、良かった、忘れられてたらどうしようかと思ったよ」

 ジタンは苦笑しながらそういうけれども
 そんな大事なこと、忘れるワケないじゃない・・・

「なぁ、ガーネット、今日で、君と俺が会って4年目になるんだよな」
「えぇ、そうね・・・」
「そして、俺と君が恋人になって、3年目になるワケだけど
 ここらで一つ・・・、区切りを・・・つけないかい?」
「区切り・・・?」
「区切りっていうか、何ていうかさ・・・うーん、何て言ったらいいのか・・・」

 ジタンは頭を抱え、うーんとひとしきり唸ったあと
 何かを決意したのか、カッ!と顔を上げ
 突然、私の肩を両手で掴むと、私の目を一直線に見据え、言った

「・・・・俺と、結婚してくれないか?」
「・・・・え?」

 血痕?いえ、結婚?え?私と?ジタンが?
 突然の事態に頭が混乱する

「ガ・・・ガーネット!?どうしたんだ!?」

 突然私が目を回しはじめたのに驚いたジタンは、必死に肩を揺する

「ジ・・ジタン・・・、け・・・結婚て・・・、えぇえ!?」
「ガーネット、落ち着いて!!」
「う・・・うん」

 ジタンは私の肩から手を下ろすと

「今すぐ返事が出来ないなら、今すぐじゃなくてもいい、俺はいつまでも返事を待ってるからさ」

 ジタンは笑顔でそういったけれども・・・
 私の中で、答えなんて、とっくに出てる

 私が口を開きかけた、その時

「・・・ッ!!ガーネットッ!!!危ない!!!」

 言うが早いか、ジタンは石造りの地面を力強く蹴ると、その勢いで私を抱え込むと、そのまま数十メートル近く跳躍した

 ―直後、大きな火球が、ついさっきまで私のいたところまで高速で飛んでくると、地面に接触と同時に、爆ぜ、大きな火柱となった

 私は、ただただそれを呆然と見ているだけだったが、ジタンは火球が飛んできた先を睨みつけると、怒鳴りつけた

「誰だ!!隠れてないで出て来い!!!」

 その男が徐々に姿を現すと同時に、ジタンの顔が、段々と引きつっていく

「お前は・・、あの時、死んだハズだろう・・・ッ!!?何故生きている!!」



続く...


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